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相続対策は「生前」でしか打てない——元気なうちに検討したい四つの手段

相続対策は「生前」でしか打てない——元気なうちに検討したい四つの手段

こんにちは。株式会社梶原エステートの梶原です。

これまで相続が起きた後の手続きや分け方についてお伝えしてきましたが、今回は生前の話です。

相続対策のほとんどは、亡くなった後には実行できません。遺言も、贈与も、名義の整理も、本人の判断能力があるうちにしかできないからです。しかも判断能力が低下すると、認知症などを理由に、売却も贈与も契約行為そのものができなくなります。「そのうち考えよう」が最も危ない理由がここにあります。

遺言——分け方を決めておく

最も基本的な手段です。不動産のように分けられない財産がある場合、誰が何を取得するかを決めておくだけで、遺産分割協議が不要になります。

方式は自筆証書と公正証書があります。自筆証書は手軽ですが、形式の不備で無効になるリスクがあり、原則として家庭裁判所の検認が必要です(法務局の保管制度を利用すれば検認は不要になります)。公正証書遺言は費用と手間がかかるものの、公証人が関与するため無効になりにくく、実務では確実性の高い選択です。

注意点は遺留分です。特定の一人に集中させる内容にしても、他の相続人には金銭での請求権が残ります。誰に何を渡すかだけでなく、請求された場合の原資まで考えておく必要があります。

生前贈与——時間をかけて移す

暦年贈与は年間百十万円までが非課税です。ただし令和六年以降、相続開始前七年以内の贈与は相続財産に加算されるようになりました(延長された四年分については総額百万円まで控除)。従来より、早く始めることの意味が大きくなっています。

相続時精算課税は、二千五百万円まで贈与時の課税を繰り延べる制度です。令和六年から年間百十万円の基礎控除が設けられ、この範囲の贈与は相続財産に加算されません。収益物件を早めに移し、その後の家賃収入を次世代に蓄積させる、といった活用も考えられます。

不動産の贈与には登録免許税と不動産取得税がかかり、相続で取得する場合より負担が重くなります。税負担を含めた比較が必要です。

家族信託——判断能力の低下に備える

近年活用が増えている手段です。財産の管理権限を、信頼できる家族に託しておく仕組みです。

例えば自宅や収益物件を信託財産とし、子を受託者としておけば、本人の判断能力が低下した後も、子の判断で売却や大規模修繕、賃貸借契約の締結ができます。成年後見制度でも財産管理は可能ですが、家庭裁判所の関与が必要で、本人のためにならない処分は認められにくいという制約があります。

賃貸経営をされている方にとっては特に有効です。オーナーが判断できなくなった時点で、建て替えも売却も修繕契約も止まってしまうリスクを避けられます。

生命保険——納税と代償の原資をつくる

見落とされがちですが、実務では重要な手段です。

死亡保険金には「五百万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。現金で持つより評価が下がるうえ、受取人を指定できるため、遺産分割協議を経ずに支払われます。

この性質が効いてくるのが、不動産が中心の相続です。実家を長男が相続する代わりに他の相続人へ代償金を支払う場合、長男に手元資金がなければ実行できません。長男を受取人とする生命保険を用意しておけば、その原資になります。相続税の納税資金としても同じ役割を果たします。

順番としては、まず現状把握から

これらの手段は、単独ではなく組み合わせて使うものです。そして、どれを選ぶかは財産の中身によって変わります。

最初にすべきは、何がいくらあるかを一覧にすることです。不動産については、路線価による評価額と、実際に売れる価格の両方を把握しておきます。この二つが大きく乖離している資産は、対策の優先度が高くなります。

そのうえで、相続税がかかるのか、分けられるのか、納税資金は足りるのかを確認する。課題が見えて初めて、遺言なのか、贈与なのか、信託なのかという手段の選択になります。

まとめ

相続対策は生前にしか打てず、判断能力の低下とともに選択肢が失われる。遺言は分け方を確定させるが遺留分への備えが要る。生前贈与は加算期間が七年に延長され、早期着手の価値が高まった。家族信託は判断能力低下後も不動産を動かせるようにする。生命保険は代償金と納税資金の原資になる。そして、すべての出発点は財産の現状把握にある。

「うちの場合、何から手をつけるべきか」という段階でのご相談も承っております。不動産の評価額と実勢価格を整理するところから、お手伝いできます。