FCRとK%——借りて得をするか、損をするかの分岐点

こんにちは。株式会社梶原エステートの梶原です。
前回はDSCRによる返済余力の話をお伝えしました。今回はもう一歩進んで、「そもそもその借入は、収益を増やしているのか」を判定する考え方です。
融資を使えば自己資金以上の規模を持てます。しかし借入が常に有利とは限りません。有利か不利かを分ける境界線が、FCRとK%の関係です。
FCR——本当の利回り
FCR(Free and Clear Return、総収益率)は、物件が生む純収益を、総投資額で割った数字です。
FCR = 年間純収益(NOI) ÷ 総投資額(物件価格 + 購入諸費用)
表面利回りとの違いは二つあります。分子が満室想定の家賃収入ではなく、空室損と運営経費を引いた後のNOIであること。そして分母に、仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬といった購入諸費用を含めることです。
購入諸費用は物件価格の七から十パーセント程度かかります。これを分母に入れるかどうかで、数字は相応に変わります。FCRは、実際に投じた総額に対して、その物件が年間どれだけ生むかを示す、最も実態に近い利回りです。
K%——返済の負担率
K%(ローン定数)は、年間の元利返済額を、借入総額で割った数字です。
K% = 年間元利返済額 ÷ 借入総額
これは金利そのものではありません。元金の返済分も含むため、常に金利より高い数字になります。そしてここが重要なのですが、K%は金利と返済期間の両方で決まります。
同じ金利二パーセントでも、返済期間が三十年なら年間返済額は小さく、十五年なら大きくなる。つまりK%は、金利と期間を一つにまとめた「借入の実質的な重さ」を表す指標です。融資条件を比較するとき、金利だけを見ても意味がないのは、このためです。
イールドギャップ——FCRからK%を引く
この二つを並べると、借入の損得が見えます。
イールドギャップ = FCR − K%
物件が生む利回り(FCR)が、借入の負担率(K%)を上回っていれば、借りた資金は収益を生んでいます。これが正のレバレッジです。逆にFCRがK%を下回れば、借りれば借りるほど手元が減る。逆レバレッジと呼ばれる状態です。
なお、イールドギャップを「FCRと金利の差」と説明されることがありますが、元金返済を無視した計算になるため、実態を見誤ります。比較すべきはK%です。
目安としては、一から二パーセント以上の差が欲しいところです。ギャップが小さいと、空室や修繕で少しNOIが下がっただけで、簡単にマイナスへ転じます。
高利回り物件の落とし穴
ここで、築古高利回り物件の構造が見えてきます。
表面利回り十五パーセントの木造築古物件があるとします。経費と空室を引いたFCRは、たとえば十パーセント前後まで下がる。一方、耐用年数の残りが短いため融資期間は七年程度しか取れず、金利二パーセントでもK%は十五パーセントを超えます。
結果はFCRよりK%が大きい、つまり逆レバレッジです。表面利回りだけ見れば魅力的でも、借りて買えば手元にお金は残りません。高利回りの正体が短い融資期間であるケースは、この計算で明らかになります。
自己資金に対する効果
最後に、レバレッジの効果を測る指標にも触れておきます。
CCR(自己資金配当率)は、税引前キャッシュフローを投入した自己資金で割った数字です。イールドギャップが正であれば、借入比率を高めるほどCCRは上がります。少ない自己資金で大きな収益を得る、これがレバレッジの効果です。
ただし、借入比率を高めればDSCRは下がり、リスクは増えます。CCRを追えば安全性が削られ、安全性を優先すれば効率が落ちる。この二つを同時に見て、どこで折り合いをつけるかが投資判断です。
まとめ
FCRはNOIを総投資額(諸費用込み)で割った、最も実態に近い利回り。K%は年間返済額を借入額で割った数字で、金利と返済期間を合わせた借入の重さを表す。FCRからK%を引いたイールドギャップが正なら借入は収益を生み、負なら逆レバレッジになる。比較対象は金利ではなくK%でなければならない。築古高利回り物件は、融資期間の短さからK%が跳ね上がり、逆レバレッジに陥りやすい。そしてCCRとDSCRは、効率と安全性という相反する側面を示す。
利回りの数字は、借入条件と組み合わせて初めて意味を持ちます。
物件資料と融資条件をお持ちいただければ、FCRとK%を算出してご説明できます。お気軽にお声がけください。
株式会社梶原エステート
代表取締役 梶原 淳
不動産売買・売買仲介・賃貸管理