BLOG ブログ

相続したアパート、引き継ぐ前の五つの確認

相続したアパート、引き継ぐ前の五つの確認

こんにちは。株式会社梶原エステートの梶原です。

相続財産に賃貸物件が含まれている場合、相続人が引き継ぐのは建物と土地だけではありません。入居者との契約、管理会社との委託関係、修繕の履歴、そして収支という事業そのものを引き継ぐことになります。

自宅の相続とは必要な確認がまったく違います。今回は、引き継ぐ前に押さえておきたい五つの点を整理します。

一、契約はそのまま承継される

賃貸借契約は、貸主が亡くなっても終了しません。相続人がそのまま貸主の地位を引き継ぎます。入居者に出ていってもらう必要はありませんし、契約を結び直す必要もありません。

ただし、敷金の返還義務も同時に引き継ぎます。預かっている敷金がいくらあるのか、実際に手元の資金として残っているのかは、早い段階で確認すべき点です。亡くなった方が自主管理をされていた場合、敷金が生活費と混ざっていることもあります。

入居者への通知も必要です。賃料の振込先が故人名義の口座のままだと、口座凍結によって入金できなくなります。混乱を避けるためにも、早めの案内が欠かせません。

二、管理委託とサブリースの中身

管理会社に委託している場合、その契約も引き継がれます。委託料の水準、業務範囲、解約の条件を確認します。

特に注意が必要なのがサブリース契約です。一括借り上げの場合、貸主側からの解約は借主保護の観点から認められにくく、賃料の減額条項が入っていることもあります。契約期間と改定条項は必ず原本で確認してください。

三、収支の実態を数字で把握する

レントロールに記載された満室想定の賃料ではなく、実際に入金されている金額を確認します。滞納はないか、空室がどれだけ続いているか、運営経費がどの程度かかっているか。

確定申告書と通帳が、最も確実な資料です。直近三年分を並べれば、その物件が良くなっているのか悪くなっているのかが見えてきます。

四、建物と設備の状態

修繕履歴と、これから必要になる修繕を確認します。外壁塗装や屋上防水は十年から十五年の周期で数百万円規模の出費になります。給湯器やエアコンの設置年も把握しておきたい点です。

一棟物件であれば消防設備の点検状況も確認対象です。未実施が続いていれば、是正に費用がかかります。

五、相続人が複数いる場合の賃料

見落とされやすいのがここです。

遺産分割がまとまるまでの間に発生した賃料は、物件そのものとは別に扱われます。最高裁の判例により、分割までの賃料債権は各相続人が法定相続分に応じて取得するとされており、後の遺産分割の結果に左右されません。

つまり、一人が物件を取得することになっても、それまでの賃料まで遡ってその人のものになるわけではありません。代表者がまとめて受け取っている場合は、この整理を前提に精算が必要です。

税務で忘れやすい二点

ひとつは準確定申告です。亡くなった方の所得について、相続開始を知った日の翌日から四ヶ月以内に申告します。

もうひとつが青色申告です。故人の青色申告の承認は相続人に引き継がれません。相続人が青色申告をするには、あらためて承認申請が必要で、期限も定められています。これを逃すと、その年は白色申告となり、特別控除などが使えなくなります。

やってはいけないこと

まず、とりあえず共有名義にすること。修繕も売却も全員の同意が必要になり、次の相続で関係者が増えれば身動きが取れなくなります。

次に、状況を把握しないまま管理会社を変えること。現場を知る相手を失うと、経緯の分からない物件だけが残ります。

そして、賃料を一人の口座にまとめたまま精算を先送りにすること。後の分割協議で必ず争点になります。

引き継ぐか、手放すか

確認を終えたら、持ち続けるか売却するかの判断になります。

借入が残っていないか、修繕が差し迫っていないか、相続人が賃貸経営に関われるか。数字と手間の両面で、引き継ぐことが現実的かを見極めます。相続税の納税資金が必要であれば、売却の期限に関わる特例も検討材料になります。

賃貸物件の相続は、資産の承継であると同時に、事業の承継です。この視点を持てるかどうかで、数年後の結果が変わります。

株式会社梶原エステート
代表取締役 梶原 淳
不動産売買・売買仲介・賃貸管理