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【管理の極意 その3】家賃改定の考え方

【管理の極意 その3】家賃改定の考え方

こんにちは。株式会社梶原エステートの梶原です。

前回は原状回復と修繕コストの適正化についてお伝えしました。今回は収入側の話、家賃の改定です。

家賃は一度設定すると、動かす機会が意外と少ないものです。しかし市場は動き続けており、据え置きは「変えない判断」ではなく「市場からずれていく選択」でもあります。上げる場合と下げる場合、それぞれの判断軸を整理します。

まず現在地を確認する

改定を考える前に、今の家賃が市場に対してどの位置にあるかを把握します。

確認すべきは、同一エリア・同一間取り・近い築年数の物件が、いくらで募集され、いくらで成約しているかです。募集賃料はあくまで希望価格なので、実際に決まった水準との差も見ておく必要があります。ポータルサイトの掲載状況に加え、仲介会社から得られる成約情報が参考になります。

このとき見落としがちなのが、設備水準を揃えて比較することです。インターネット無料、独立洗面台、オートロック、宅配ボックスといった設備の有無で、同じ間取りでも数千円の差が生まれます。単純な賃料比較では判断を誤ります。

値上げを検討できる場面

家賃の増額請求は借地借家法に根拠がありますが、実務では合意が前提です。一方的に通知すれば済むものではなく、応じていただけなければ従前家賃のままとなります。だからこそ、根拠と納得感が必要です。

検討できるのは、次のような場面です。

周辺相場が明確に上昇し、自室の家賃が下回っている場合。設備を更新し、提供する価値が実際に上がった場合。固定資産税の増額など、負担が客観的に増えた場合。

ただし、更新のたびに機械的に上げるような運用は避けるべきです。前回お伝えした通り、退去には空室損・原状回復・広告料などのコストが伴います。月額二千円の増額で年間二万四千円を得ても、それが退去の引き金になれば差し引きは大きくマイナスです。

現実的なのは、設備投資とセットで提示する方法です。エアコンの入替えやネット無料化を行ったうえで改定をお願いする。負担だけが増える形を避けることが、合意に至る最大の条件になります。

値下げを検討する場面

空室が長引いたとき、値下げは最後の手段です。順序としては、募集条件の見直しが先にきます。

敷金礼金の調整、フリーレントの付与、広告料の増額、募集写真の刷新、設備の追加。これらは一時的な費用で済みますが、賃料の引き下げは翌年以降も続く恒久的な減収です。しかも一度下げた賃料を戻すことは容易ではありません。

数字で見ると分かりやすくなります。家賃六万円の部屋で三千円下げれば、年間三万六千円、十年で三十六万円の減収です。一方、フリーレント一ヶ月なら六万円の負担で済み、翌年以降には影響しません。同じ「決めるための譲歩」でも、賃料と初期費用では性質がまったく違います。

さらに、既存入居者との整合も考える必要があります。新規募集の賃料が既存入居者を下回れば、更新時の減額交渉や不満退去の火種になります。

それでも下げるべき局面はあります。相場から明らかに乖離している場合、長期空室で機会損失が積み上がっている場合です。空室三ヶ月は家賃十八万円の損失ですから、三千円の減額で早期に決まるなら、その判断は合理的です。

減額請求を受けたとき

入居者様から家賃の減額を求められることもあります。この場合も、まず現在地の確認が出発点です。

相場が実際に下がっており、自室の家賃が上回っているのであれば、要求には一定の根拠があります。拒否して退去となれば、次の募集はその下がった相場で行うことになり、加えて空室損と原状回復費が発生します。長期入居者であれば、応じるほうが合理的な場合が少なくありません。

逆に相場と乖離がないのであれば、比較データを示して説明することになります。感情的なやり取りを避けるためにも、客観的な数字を土台にすることが有効です。

改定は「単価」より「総収入」で考える

最後に、判断の軸を整理します。

賃貸経営の収入は、賃料単価ではなく「賃料 × 稼働率 × 入居継続期間」で決まります。単価だけを追えば、稼働率と継続期間を損なうことがあります。

満室で相場より低い物件と、相場並みだが常に空室がある物件を比べれば、前者のほうが手残りは大きいこともあります。逆に、相場より大きく低い水準で長年据え置かれている物件は、入替えのタイミングで適正化を図る余地があります。

つまり改定の判断は、その一室の増減だけでなく、物件全体の収入構造に対して行うものです。前回までにお伝えした稼働率や平均入居期間といった指標が、ここ効いてきます。

まとめ

家賃改定の前に、設備水準を揃えたうえで相場との現在地を確認する。値上げは合意が前提であり、設備更新とセットで提示することが合意の条件になる。値下げは最後の手段で、まず初期費用や募集条件の調整を検討する。賃料の引き下げは恒久的な減収である一方、フリーレントは一時的な負担にとどまる。減額請求には客観的な数字で対応する。そして判断は単価ではなく、稼働率と入居期間を含めた総収入で行う。