相続で揉めるのは、いつも不動産——「分けられない財産」をどう分けるか

こんにちは。株式会社梶原エステートの梶原です。
相続のトラブルというと、資産家の話だと思われがちです。しかし実際に揉めるのは、遺産の中身が「実家一軒と、わずかな預貯金」というご家庭です。
理由は単純で、不動産は分けられないからです。預金なら一円単位で割れますが、家は半分に切れません。しかも遺産の大半を不動産が占めていると、公平に分けようとした時点で選択肢が限られてしまいます。
今回は、不動産をどう分けるかという実務の話です。
分け方は四つしかない
不動産の分割方法は、大きく四つに整理できます。
現物分割は、そのままの形で誰か一人が取得する方法です。長男が実家を、次男が預金を、という形。手続きが簡単な一方、不動産の価値が大きいほど不公平感が生まれます。
代償分割は、一人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法です。実家に住み続けたい方がいる場合の現実的な解ですが、取得する人にまとまった手元資金が必要になります。
換価分割は、売却して現金を分ける方法です。最も公平で、後腐れがありません。ただし住んでいる方がいれば実行できず、売却価格や時期の判断で意見が割れることもあります。
共有分割は、複数人の共有名義にする方法です。その場では最も平等に見えます。しかし、これが後述する通り、最も危険な選択肢です。
「とりあえず共有」が最悪の結末を呼ぶ
話がまとまらないとき、「ひとまず兄弟三人の共有で」という結論になりがちです。誰も損をせず、決断を先送りできるからです。
しかし共有には、決定的な問題があります。
売却や建替えといった処分行為には、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば、その不動産は何もできない資産になります。賃貸に出すにも過半数の同意が要り、修繕費の負担でも意見が割れます。
そして最大の問題は時間です。共有者の誰かが亡くなれば、その持分は次の世代へ相続されます。三人の共有が、十年後には甥や姪を含む七人になり、二十年後には面識のない親族十数人の共有になる。こうなると全員の合意は事実上不可能で、売ることも貸すこともできないまま、固定資産税だけを払い続ける負動産が完成します。
共有は問題の解決ではなく、次世代への先送りです。どうしても共有にするなら、将来の売却条件や持分の買い取りルールをあらかじめ書面で定めておくべきです。
評価額が一つに決まらない
分割の話し合いがこじれるもう一つの理由が、不動産の価値です。
不動産には複数の価格が存在します。国が公表する公示価格、相続税の計算に使う路線価(公示価格の八割程度)、固定資産税評価額(同七割程度)、そして実際に売れる価格である実勢価格です。
問題は、相続人がそれぞれ都合のよい価格を持ち出すことです。実家を取得したい側は「路線価では三千万円だ」と言い、代償金を受け取る側は「実際には四千万円で売れる」と主張する。どちらも嘘ではないため、議論が平行線をたどります。
こうした場合、第三者による査定を取って共通の土台を作ることが有効です。感情論に見える対立の多くは、実は数字の前提が揃っていないことから生じています。
遺言があっても揉めるとき
遺言書があれば安心、とは限りません。
例えば「実家は長男に相続させる」とだけ書かれていた場合、他の相続人には遺留分(法定相続分の原則二分の一)を請求する権利が残ります。二〇一九年の法改正で、遺留分の請求は金銭で行うこととされたため、長男は自己資金で支払わなければなりません。不動産しかない相続では、この支払いのために結局売却せざるを得ないケースもあります。
遺言を作るなら、誰に何を渡すかだけでなく、遺留分に相当する資金をどう用意するかまで設計しておく必要があります。生命保険を活用して代償金の原資を作っておく、といった対策が有効なのはこのためです。
分け方を考える順番
実務上は、次の順で検討すると整理しやすくなります。
まず、その不動産に住み続ける人がいるかどうか。いるなら代償分割が軸になり、代償金をどう工面するかが論点になります。
次に、誰も住まないのであれば、換価分割が原則です。空き家は維持費だけがかかり、時間とともに価値が下がります。売却して現金で分けるのが最も明快です。
そのうえで、収益物件として活用できる立地なのか、あるいは売却して現金化すべきなのか。ここは資産としての判断になります。
そして忘れてはならないのが、税務との兼ね合いです。小規模宅地等の特例は誰が相続するかで適用が変わりますし、売却するなら空き家の三千万円特別控除や取得費加算の特例には期限があります。税額まで含めて考えると、最初に思い浮かんだ分け方が最善でないこともあります。
まとめ
相続で揉める原因は、不動産が分けられないことにある。分割方法は現物・代償・換価・共有の四つで、共有は問題の先送りであり将来の負動産化を招く。評価額は複数存在するため、第三者査定で共通の土台を作ることが対立の解消につながる。遺言があっても遺留分は残るため、代償金の原資までを設計しておく必要がある。
そして、分け方は税務と切り離せません。誰がどう相続するかで税額が変わり、売却時期によって使える特例も変わる。だからこそ、相続不動産は税理士と不動産の専門家が両輪で関わるべき分野なのです。
株式会社梶原エステートでは、相続不動産の査定、分割方法のご相談、税理士等と連携した売却スケジュールのご提案まで承っています。
「実家をどう分ければいいか、家族で話が進まない」 「まず、いくらの資産なのか客観的に知りたい」
そうした段階でのご相談こそ、選択肢が多く残っています。お気軽にお声がけください。
株式会社梶原エステート 代表取締役 梶原 淳 不動産売買・売買仲介・賃貸管理
※法務・税務の個別判断については、弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。